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2019-03-29

消費税増税に伴う飲食店の“メニュー値上げ”の考え方|客離れを抑える対策

2019年10月に予定されている消費税増税。それに合わせてメニューの値上げをすると、客が離れてしまうのではないか、と心配している飲食店オーナーも多いだろう。
そこで、この記事ではメニューを値上げするメリットとデメリット、値上げするタイミング、客離れを抑えるためのポイントなど、消費増税に伴う値上げについて詳しく解説していく。

目次

値上げを余儀なくされる背景

飲食業界には金銭的コストの問題が山積しており、値上げを余儀なくされる飲食店が増えている。現状のまま消費増税が実施されるとなると、現在の料金体系で経営を成り立たせていくのは至難の業だ。
まずは消費増税以外の面から、飲食店が値上げを余儀なくされる環境要因を分析しよう。

消費税増税だけではない

消費税増税以外の面でも、飲食店を取り巻く環境は年々厳しくなっている。
例えば人手不足の問題は多くの業界で表面化しているが、特に飲食業界は人手不足が深刻で、また慢性化していると言える。人の入れ替わりが多い飲食店では、採用や教育にかかるコストや時間が増えてしまい、人件費が利益を圧迫してしまう。

また、2017年6月の改正酒税法によって、お酒の過度な安売りが規制され、稼ぎ頭であるアルコールメニューの利幅が小さくなったことも、値上げを考える一端になっている。

食材分野の消費者物価指数は、2013年からの5年間で5%以上も上がっている。一部メーカーの業務用小麦粉類や製麺類といった、一般的な食材の価格も上昇傾向にある。ここに消費増税の影響がのしかかると、飲食店は値上げを検討せざるを得ない。

大手飲食チェーン店の動向

大手飲食チェーン店は先手を打って、メニューの値上げを実施している。
2019年2月には、スターバックスコーヒーがキャラメルマキアートやドリップコーヒーなどの看板商品の値上げに踏み切った。主力商品を対象にしたものとしては、実に8年ぶりの値上げになる。その背景には、コーヒー豆を中心とした原材料と、人件費・物流コストの高騰があると発表している。

カレーチェーンのCoCo壱番屋も、全国988の店舗でポークカレーを21円値上げしている。こちらも、米などの値上げや非正規雇用者の時給アップなどによって、自助努力ではカバーできなくなったとコメントしている。

このようにさまざまなコスト削減を試みている大手チェーン店ですら、値上げを踏み切る段階に来ている。

値上げで売上は上がる? 下がる?

もはや値上げは飲食店にとって十分検討しなければならない手段である。
しかし、値上げによって売上が下がるのではないか、客離れを招いてしまうのではないかという不安が残る。そこで値上げがもたらすメリットとデメリットを確認していこう。

値上げのメリット

メニューの値上げを行うメリットは、当然ながら利益率の改善が見込めることだ。原価が同じなら値上げした分だけ利益が増えるのは当然のこと。

実際に値上げをした店舗のデータを確認してみよう。飲食フード産業の求人サイト「クックビズ」の調査によれば、2017年に値上げを行った飲食店のうち増益になったのは28%であった。それに比べて値上げをしなかった店舗で増益になったのは23.8 %と、値上げ実施店の方が4.2ポイントも好成績となっている。
また、値上げしなかった店舗のうち29.8%が赤字経営に陥っているのに対して、値上げした店舗はわずか8%にとどまっている。

また、1997年に消費税率が3%から5%に引き上げられたときは、社会全体が値下げに走って経済が悪化し、その後のデフレにつながったと分析されている。やはり環境が厳しいときこそ、継続的な経営基盤を守るための値上げが効果的であることがわかる。

値上げのデメリット

値上げのデメリットは来店する客数の減少だ。例えば、2017年に全品18円の値上げを行った鳥貴族では、その直後から客足が減速し、2018年8~10月期の単独決算での純利益が前年同期比75.9%減となっている。これは、「安い焼き鳥」のイメージが損なわれてしまったためと考えられる。客にとって意味のない値上げや、目につく値上げ、お得感を大きく下げてしまう値上げは避けねばならない。

客離れを抑える値上げのポイント

値上げによって客離れが起きることは、何としても防がなくてはならない。どうすれば顧客に値上げを受け入れてもらえるだろうか。ここでは失敗しない値上げのポイントについて紹介しよう。

客離れを抑える値上げのポイント

値上げのタイミングは?

消費税増税のタイミングに合わせてメニューの値上げを実施することは極力避けておきたい。どんな理由であれ、食材にかかる増税コストを料金に転嫁したと思われるのは避けられない

これを避けるために、増税とは関係がない早めの時期、まだ世間が騒ぐ前に値上げを済ませてしまうのがよい。そして、増税のタイミングでは一切値上げをせずに静観しよう。むしろ「値上げはしません」とアピールすることで、他店の値上げを嫌った客が流れて来ることも期待できる。

値上げの幅はどうする?

値上げの幅ポイントだ。値上げ幅が少なければ値上げの効果が薄れ、上げすぎれば客離れを招いてしまう。重要となるのは客とメニューの単価だ。一般的に安さを売りにしている飲食店の場合、顧客は小さい値上げ幅でも敏感に違いを感じてしまう。

一方で、単価が高いメニューの値上げでは、理由がしっかりしていれば、メニューが改善されたと受け取ってもらえる可能性がある。同じ100円の値上げでも、300円のメニューが400円になるのと、2400円のメニューが2500円になるのとでは印象が違うのは当然だ。

先ほどの「クックビズ」の調査では、値上げをした店舗の72%は10?15%の値上げをしたと回答している。だが一番大切なことは、自分の店舗のイメージに合った値上げを行うことだ。

付加価値をプラスする

まったく同じメニューのまま値上げをしてしまうと、顧客に損した印象を与えてしまう。そこでおすすめしたいのが、それまでなかった付加価値を作ることだ。
トッピングを増やしたり、素材を少しよいものに変更したりと、目に見える価値を加えることができれば、値上げに対する顧客の納得感も高まるだろう。

素材や生産者や調理法などの情報を伝えていなかったのであれば、これを機会にわかりやすく伝えてみるのもよい。何かしらの「新しさ」は値上げの際の武器になる。

値下げメニューを作る

値上げの際の対策として有効なのが、値下げメニューを作ることだ。前述の鳥貴族の例では、均一価格というサービス上、一気に全商品を値上げしてしまったため、顧客に納得してもらえなかった、という考え方もできる。
前述した「新しさを出す」「付加価値をつける」などの方法も、すべてのメニューで行うことは困難だ。そこで一部のメニューの値段を下げることで、全体としてのバランスを保つことを考えたい。

例えば2019年2月1日から、EUとの経済連携協定が発効し、低価格帯のワインの関税が安くなる。加えて、チーズも段階的に関税が引き下げられる。こうした価格が高騰しない原材料を見極めて、メニューを新しく作成するのも効果的。
また、消費増税の中でも、軽減税率の対象となるテイクアウトや出前・デリバリーメニューで勝負をかけるのもおすすめだ。

サービス向上による付加価値

サービスそのものを見直す

最後に、個々のメニューに限らず、サービス全般を見直すことも提案したい。
例えばメニューブックを刷新して写真をきれいにしたり、メニューに関する情報を加えたりする。メニューの名前をもっとユニークなものに変更する、季節によってデザインを変えるなどの方法も有効だ。

接客も改善ができるポイント。制服を変えたり挨拶や案内を変えたり、店内の雰囲気に高級感を出したりなど、今までにない価値を加えれば、ワンランク高いメニューでも自然と受け入れてもらえるようになるだろう。

値上げは経営見直しの絶好のチャンス

このように厳しい環境の中で迎える消費税増税だが、考え方によってはチャンスとなる。値上げを躊躇して伸び悩むか、前向きに値上げを取り入れて足腰の強い店舗になるか、いずれにしても何らかの決断をする必要がある。
消費増税を機会に、メニューやサービスなどを根本から見直し、経営の改善を進めてみよう。