TOP  >  コラム  >  その他  >  飲食店を守るために必要な防災の基礎知識と5つの防災対策

2022-08-10

飲食店を守るために必要な防災の基礎知識と5つの防災対策

飲食店の防災

豪雨や地震、新型コロナウイルスの流行など近年は多くの深刻な被害をもたらす災害が発生しており、自治体だけでなく、飲食店も自店舗を守るためには防災対策を強化していく必要がある。

しかし、今から初めて防災に取り組もうと考えている方の中には自店舗でどのように防災を考えれば良いのか分からないのではないだろうか。

そこで今回は防災士の筆者が飲食店に防災が欠かせない理由と主な災害の種類、飲食店における防災対策などを徹底解説していく。

この記事を読むことで、どのように防災対策に取り組めば良いのか分かるため、ぜひ最後まで読み進めてほしい。

目次

飲食店における防災の重要性

災害対策基本法第2条の2で説明されているとおり、防災とは、あらかじめ想定できる災害による被害を最小限に抑えるための対応のことであり、被災後の復旧・復興も防災の一環として分類されている。

災害によって想定以上の被害が引き起こされる場合も決して珍しくなく、十分な防災対策をしていても人的・物的被害を完璧に防ぐことはできないものの、防災を行うことによって被害を最小限に抑えることができるため、防災に取り組まない理由がないだろう。

「防災に力を入れても直接的な利益にはならない」「防災よりも集客などにコストをかけたい」と考える飲食店のオーナーも中にはいるかもしれない。

しかし、防災に取り組まない状態で自店舗が突発的な災害に巻き込まれた場合、復旧コストなど損失の方が大きく上回るほか、被害状況によっては長期的な休業を余儀なくされてしまうため、自店舗の利益を守るという側面も防災にはあるのだ。

ことわざの備えあれば憂いなしに従って、自店舗の飲食店を災害から可能な限り守るためにも普段から最善と考えられる防災対策に取り組んでおくことが得策だと言えるだろう。

防災と危機管理の違い

防災と混同されることも多い危機管理だが、厳密には役割が大きく異なる。

防災が想定内の災害による被害を可能な限り対策していく取り組みであるのに対して、危機管理は想定外のリスク発生後にその被害を最小限に抑えるための取り組みだ。

つまり、危機管理は想定外の事態が発生した場合にその被害を最小限に抑えるための取り組みであり、状況に応じて、臨機応変に対応していく必要がある。

被害を最小限に抑えるという意味では、防災と危機管理を複合的に行うと良いだろう。

飲食店で想定される3種類の災害

飲食店で想定される3種類の災害

災害=地震や台風などの自然災害をイメージする方が多いかもしれないが、災害とひと口に言っても、防災で想定している災害には自然災害・人為災害・特殊災害の3種類がある。

自店舗の立地などの状況によって、優先的に対処するべき災害は異なるが、効果的な対策をする上では、あらかじめどのような災害があるのかを知っておくに越したことはない。

この章では、3種類の災害を詳しく解説していくので、ぜひ参考にして欲しい。

自然災害

自然現象によって引き起こされる地震や台風、水害などの災害のことであり、主には以下の種類がある。

【地震】
海洋プレートと大陸プレートの運動、または噴火やマグマの活動によって生じる大きな揺れのことであり、発生するメカニズムによって、海溝型地震・内陸型地震(直下型地震)・火山性地震に分類される。海溝型地震が起きると、津波が誘発されてしまう

【台風】
北西太平洋または南シナ海に存在し、低気圧域内の最大風速が17m/s以上の強い低気圧のことを指す。台風は上陸後に勢力が弱まる傾向があるものの、積乱雲が伴うため、豪雨によって深刻な水害被害が引き起こされてしまう

【水害】
豪雨など水が原因で発生する災害の総称であり、主には外水氾濫や内水氾濫、高潮、土石流、がけ崩れ、地すべりなどがある。外水氾濫は復旧が長期化するほか、内水氾濫は近隣に河川がない場合でも発生するため、注意が必要

【火山災害】
活火山の活動によって、引き起こされる災害の総称のことであり、主には噴石や火山灰、火砕流、溶岩流などがある。火山灰は状況によっては数百km先まで降り注ぐことで、公共交通機関の運行停止など深刻な被害を広範囲にわたってもたらす

人為災害

人為災害とは、ヒューマンエラーや交通事故、火災など人為的なミスが原因で発生する災害のことであり、主に以下の種類がある。

【産業災害(労働災害)】
勤務中に発生する事故を指し、ヒューマンエラーによる負傷のほか、長時間残業やパワハラなど劣悪な勤務環境によるメンタルヘルスの不調も含まれる

【管理災害】
ずさんな設計や計画によって発生する事故のことを指し、建築基準法を守っていない設計の建築物による事故などが該当する

【交通災害】
自動車や飛行機、船舶、自転車、バスなどの交通事故のことであり、世間では日常的に起きているが、自動車で業務を行う場合は優先的に対策する必要がある

【都市災害】
大気汚染や水質汚濁など環境破壊が原因で発生する災害のことであり、一般的には火災も都市災害に分類される

特殊災害(CBRNE災害)

特殊災害とは、有害化学物質の漏洩や感染症の流行など自然現象以外が原因で発生する災害のことであり、該当する災害の頭文字をとってCBRNE災害とも呼ばれている。

【化学(Chemical)】
化学兵器によるテロや有害化学物質が漏洩したことなどによって発生する災害のことで、一酸化炭素中毒なども含まれる

【生物(Biological)】
生物兵器によるテロやインフルエンザや新型コロナウイルスなど感染症の流行などによる災害のことであり、アメリカ炭疽菌事件が有名

【放射性物質(Radiological)】
原子力発電所の事故などによって、放射性物質が漏洩することで発生する深刻な被害をもたらす災害を指す

【核(Nuclear)】
原子爆弾や水素爆弾など核兵器を使ったテロのことであり、CBRNE災害はもともとはテロに備える目的でが想定されていた

【爆発(Explosive)】
自爆テロや工場の爆発などによる災害で、ロンドン同時爆破事件のように大規模な死傷者が発生してしまう

飲食店における防災対策5選

飲食店における防災対策5選

ここまで防災の基礎知識を紹介したが、飲食店においてはどのような防災対策を取り入れることが望ましいのだろうか。

次にこの章では、飲食店における主な防災対策を説明していくので、これから防災を強化しようと考えている方はぜひ読み進めてほしい。

防災マニュアルを策定する

災害発生時にすばやく最善と考えられる行動を開始するために、まずは防災マニュアルを策定してこう。

防災マニュアルには、基本となる行動指針や想定する災害の種類、お客様の誘導など優先的に行う対応と担当メンバー等を記載するほか、対応が上手くいかない場合の代替案となる行動も定めておくことが望ましい。

防災マニュアルのひな形は自治体ごとに発表されているため、参考にしながら、自店舗の状況にあわせた防災マニュアルを作っていくと良いだろう。

また発生する災害の種類や規模、状況を想定した自治体のハザードマップを確認しておくことで、防災マニュアルで最善と考えられる対応を定めることが大切だ。

防災訓練を定期的に開催する

防災マニュアルを策定しただけでは意味がないため、定期的に防災訓練を実施して、全従業員に十分に対応を浸透させていこう。

防災訓練では、何を従業員に学ばせたいのかという目的を明確にし、想定する災害のシナリオを作成したうえで防災マニュアルで定めた役割を従業員に行ってもらう形だ。

防災訓練終了後に意見交換を行い、防災マニュアルで定めた対応が効果的ではないことが分かった場合は、防災マニュアルの見直しを行って、より効果的な対応にしていくと良いだろう。

避難ルートを確保する

地震などの災害発生時に自店舗からスムーズに避難できるかどうかをあらかじめ確認しておくことが重要だ。

建築基準法施行令第2節119条では、安全な避難のために以下のように廊下幅が定められているが、廊下幅を守っていても、物で塞がれている場合は所轄の消防署から指導が入るおそれがある。

廊下の片側に部屋がある場合:1.2m以上
廊下の両側に部屋がある場合:1.6m以上

そのため、避難ルートの廊下幅を確保したうえで避難の邪魔になりそうな物を近くに置かないことが大切だ。

防災グッズを用意しておく

東京都防災ホームページの「東京都帰宅困難者対策条例」で定められているように、大規模な地震などの災害が発生したことで屋外に出ることが危険な場合は3日程度、従業員を自店舗などの事業所に滞在させることが求められている。

従業員の安全を確保するためには、人数に応じて、3日分の防災グッズを用意しておくことが望ましい。

必要な防災グッズは多岐にわたるため、判断が難しい場合は、必要な防災グッズ一式が揃ったセットを人数分、購入しておくと良いだろう。

安否確認の方法を決めておく

自店舗の閉店中やパート・アルバイトの休み中に災害が発生する場合があるため、そうした事態に備えて、あらかじめ安否確認の方法を決めておこう。

電話のみでは災害発生時に回線が輻輳状態に陥ることで電話が一時的にかけられなくなってしまうため、メールや連絡アプリも併用するなど複数の手段で安否確認をすることが望ましい。

またスムーズに対応できるように、安否確認で確認する内容を絞っておくことが大切だ。

最後に

突発的に災害に巻き込まれた場合、防災対策に取り組んでいなければ、大きな損失が発生するほか、長期的な休業など最悪は取り返しのつかない事態に陥ってしまうため、あらかじめ対策しておくことが望ましい。

この記事を参考に自店舗の状況に応じた最善と考えられる防災対策を今から導入していくと良いだろう。